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加茂岩倉の復元銅鐸分析で判明したこと
銅鐸の厚さなぜ3ミリ 素早く冷却 表面を硬く 内部の空孔を防ぐ知恵

弥生時代(紀元前三世紀〜紀元三世紀)のなぞの青銅器、銅鐸(どうたく)の厚さが3mm程度しかないことについて、兵庫県内の民間研究機関ニッテクリサーチがこのほど、島根県大原郡加茂町の加茂岩倉遺跡で出土した銅鐸の復元品を分析。
鋳造時に内部にできる穴やすき間を埋めるには冷却速度を高める必要があり、そのために薄く造ったとする興味深い見解を明らかにした(中国新聞文化部・守田靖)。


さまざまな分析に使われた加茂岩倉遺跡1号銅鐸の復元品 (NHK松江放送局製作)
分析したのは、新日鉄関連グループ「二ッテクリサーチ」(姫路市)の織田昌 彦さんと有馬良士さん。NHK松江放送局が加茂岩倉1号銅鐸をモデルに番組用に復元した銅鐸(高さ45cm)を分析した(→化学組成分析)

銅85%、スズ10%、鉛5%の混合比は、国内で出土した銅鐸のほぼ平均値という。 一般的に銅鐸のX線透過写真を撮ると、銅鐸表面は滑らかでも内部には大きくて無数の空孔(穴やすき間)がみられる。空孔は、鋳造時に発生する水素ガスや水蒸気などが閉じ込められた跡。島根県簸川郡斐川町の神庭(かんば)荒神谷遺跡の銅鐸でも確認されている。

空孔は、乾燥を徹底させると生じにくい。有馬さんは「たたら製鉄も乾燥を重 視している。古代人も青銅器鋳造時には、乾燥にかなり神経を使ったのではない か」と推測する。
出土した青銅器は文化財であり、日本では破壊して分析できないため、通常は蛍光X線をあてる成分分析と、X線透過写真どまりだった。

「しかし、それでは鋳造方法を推定する手掛かりが十分得られない」と織田さん。今回、復元品だからこそ、と試みられたのがX線マイクロ・アナライザーによる分析。すそなど8ヵ所から10mm×5mmの試料を採り、元素の分布状況を調べた。

この結果、銅とスズは合金化しているのに、鉛は単独で細かく分布していることをつかんだ。 このことから、三つの金属が溶け合った液が凝固する過程で、まず銅が結晶し始め、次に銅とスズの合金が結晶化。凝固温度が低い鉛はその後、全体が冷える際の収縮でできた細かい穴やすき間を埋めていった過程が分かってきた(→凝固モデル)。ところが、重い鉛がゆっくり固まれば下方にたまってしまい、穴やすき間が埋まらずじまいになる。

有馬さんは「穴やすき間のない銅鐸を造るには早く冷却しなければならない。だから肉厚を薄くしたのではなかろうか。薄すぎても割れやすくなる。少ない原料を最大限生かすには、3mmがちょうどいい。古代人は経験的に知っていたのだろう」と推測する(→金属学的現象の推定)
さらに、銅鐸表面は内部に比べ1.5〜2倍も硬いことも分かった。表面だけの硬さを測る従来の手法ではつかめなかった。薄くすれば表面が硬くなり、軟らかい内部を保護する副次的な効果もあったようだ。

織田さんらは「最新機器を駆使して初めて、二千年前の青銅器鋳造技術の高さと、銅鐸の薄さの秘密がおぼろげながら分かった。何よりも古代技術者の優れた知恵と経験に敬服せざるをえない」と話す。

(中国新聞(平成10年6月18日)より転載)

講演発表内容全文


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